ソード オブ ザ バークラントのプレイ感想とレビュー。
ソード オブ ザ バークラントのプラチナトロフィーを取得したので、先にプレイ感想とレビューをまとめる。
今作は、お手頃価格(なんと990円ッッ)で遊べる、2DアクションRPGである。
グラフィックを見れば分かる通り、ヴィジュアル面はヴァニラウェアのゲームに強く影響を受けているのが分かるが、ゲーム性についても同様である。
ヴァニラウェアの後を追うインディーズゲーということで、若干の期待を抱きながら手に取ったわけだが、果たしてどんな評価に落ち着いたのだろうか。
これから書いていこうと思う。
概要
プラットフォーム | PS5(2023年に販売予定らしい)/PS4/Steam/Switch/Xbox One |
発売日 | 2022/12/01 |
メーカー | OTKGames, DICO(販売:Rainy Frog) |
ジャンル | アクションRPG |
キャッチコピー | 全ては家族との再会のため。果てしない探求は続く。 |
開発は「OTKGames」と「DICO」、販売は「Rainy Frog」。例によって、知らないメーカーばかりである。
ちょっと調べてみたところ、おそらく「OTKgames」がゲームを開発し、「DICO」がローカライズ、そして「Rainy Frog」が販売…という感じっぽい?
DICOという会社に関しては、ゲームだけではなくアニメのローカライズもしているようで、日本のアニメに外国語の字幕を付ける業務もしている様子。会社の設立者がスペイン人だったりで、かなりグローバルな会社である模様。
他の二社に関しては…各々調べてみてね☆
ジャンルはアクションRPGとあるが、ヴァニラウェアのソフトを思い出してもらえれば分かりやすい。結構そのまんまな感じ。
以下、項目ごとの評価と感想。
#戦闘(ゲーム性)
良い面もあるが惜しい面もある。
開発が「ヴァニラウェアのゲームが好き」と豪語しているだけあって、操作性やゲーム性はそれにかなり近似している。
2DアクションRPGといった戦闘であるので、ヴァニラウェアのゲームだけではなく最近流行りのメトロイドヴァニアを嗜んでいる人でも楽しめそうな感じ。
〇.融通の利くアクション
攻撃、ジャンプ、回避、スキル発動…と、大体のアクションが滑らかにつながる。
更に、攻撃中はいつでもキャンセルが可能と、思い通りに動かせるので操作におけるストレスがあんまり無かった。
操作性の快適性は動かす面白さに直接繋がるので、ここは素直に評価点。
〇.爽快感ある演出とフィーリング
ヒットストップが結構強めであり、敵を殴る手ごたえと快感が確かにある。
マスクデータとして武器毎に攻撃速度の速さが設定されており、それが遅い武器だとそれがより顕著に感じられる。
敵を撃破した時の「ドゥン!」という重苦しい音も、妙な気持ちよさがある。低音は正義。
×.戦闘の幅が狭い
アクション自体はスピーディーで激しめだが、コンボゲーのような「様々な攻撃を組み合わせてテクニカルに~」と言った要素は無い。
通常攻撃のバリエーションも少なく、スキルも一つで完結する物ばかり。なので、結局最終的には連打ゲーになる。
強い技もある程度絞られるので、中盤あたりからはやることが変わらなくなる。結果、最後まで変わり映えしない戦闘が続く。
もう少し戦闘において工夫する余地が欲しかったかなぁという印象。あるいは、無駄に使ってみたくなるような、中毒性の強い何かが欲しかった。
×.飛び道具に反撃する手段が無い
飛び道具持ちがそこそこ多い。更に、そういった敵ほど逃げ足が速いか、空を飛んでいて手を出しにくい。
よって、横槍を入れられ放題になりがち。乱戦ほどこの傾向が強い。
「まずは近接系の雑魚を処理してから~」と思っても、飛び道具がウザい。「じゃあ飛び道具持ちから~」と思っても、無駄に手を出しにくいから処理に手間取ってストレスが溜まる。
よくありがちだが、「飛び道具をジャストガードすると跳ね返せる」ぐらいの反撃要素があっても良かったのでは?
それか、単純に主人公にも飛び道具を持たせるか。
一応、スキルに飛び道具的な性能を持ったものもあるのだが、燃費がかなり悪い上に正面にしか飛ばない。よって、使い勝手は良くない。
この点においては、結構ストレスが溜まるシーンが多かった。特にラストダンジョン。
×.上下に対応する術が限定的過ぎる
これもストレス要素。飛んでいる敵や、壁と床を貫通してくる亡霊のような敵が多いので、とにかく四方八方から突っ込んでこられるシーンが多い。
それにも関わらず、通常攻撃は正面を殴るものばかり。なので、上下から攻めてくる敵には燃費の悪いスキルを使わなければならない。
よって、RAGEが無い時はどうしようもない。これがかなりめんどい。更に、足場が悪いステージでもお構いなしに出現してくるので、いちいち落とされたりしてまためんどい。
通常攻撃でも全方向に対応できてよかったのでは?
×.スキルのセット数が少ない
「オーディンスフィア レイヴスラシル」のように、ほとんど全部のスキルをセットできるぐらいの枠を用意してほしかった。
このスキル枠問題のせいで、使う技がより限られがちになっていたのが残念。
×.RAGEの数値が見えないためスキル使用の可否が分かりにくい
今作は、RAGEの最大値や消費値は分かっても、RAGEの現在値は分からない仕様である。
なので、今どれぐらいRAGEが残っているのかが分からない。よって、スキルを発動出来るのかどうかが分からない。
「感覚でつかめ」と言われればそれまでだが、それはそれで不便過ぎる。てかそれぐらい数値で教えてくれても良くない?
スキル毎に消費RAGEが異なるし、RAGEの回復手段も豊富だから明確に数値を頭の中で計算なんて出来ないんだし。
#グラフィック
ドットが綺麗。
今作一番の評価点。ヴァニラウェアに負けず劣らずなドット絵であり、イラストがそのまま動くあの感じを忠実に再現している。とても綺麗で、よく動く。お見事。
この唯一無二なグラフィック表現を体験できるソフトはなかなか無いので、その面だけでもこのソフトを手に取る価値はあると思う。
#ストーリー・キャラクター
かなり薄味。
幼少期に家族が全員死んでしまったorいなくなった傭兵・ヴィヴィアンが、己の家系に隠された宿命を追いかけ、成り行きで出会ったショタと仲良くするお話。
話は少し暗いが、かと言って胸糞悪くなるほどのシーンは無い。見ていて気分が悪くなるような場面は無かったので、そういう意味では安心して追える話なのかもしれない。
が、キャラの掘り下げが浅く、登場キャラに対する感情移入はあまり出来ない。特にサブキャラ。
主人公のヴィヴィアンに関しては、辛い生い立ちや境遇をきちんと語れるのでその限りではないのだが、それ以外のキャラに関しては…うん。「それらしいこと言ってんなぁ」ぐらいの感じ。
もう少し、キャラ毎の背景描写があってもよかったのではと感じられた。話自体は嫌いじゃない。
あと、せっかく綺麗なドット絵を採用しているのだし、要所要所に入るイベントシーンでそちらをもっと動かしてくれれば面白くなりそうだったのにとは感じられた。
重要なシーンは一枚絵で問題無いとは思うが、それ以外のシーンでの動きが無さ過ぎて淡泊な演出になってしまっていた印象。
#システム
良い点もあるが、不親切な点も目立つ。
〇.無難なスキルツリー
無難ではあるが、アビリティを取得する順序次第でゲームクリアぐらいまでなら、成長の方向性をある程度尖らせることも可能。まぁ、最終的に全部アビリティを取ってしまえば同じ性能になるのだが。
〇.ルーン付与による自由なビルド構築
今作では、ルーンという名の効果を付与するアイテムを、武器と防具にそれぞれ最大4つずつ付与できる。
攻撃力や防御力アップといったものから、クリティカル率アップや攻撃でHP回復など、種類はそれなりにある。
それらの種類に加えて、各々の種類にレベルが1~5まであるので、ルーンの吟味とセットが面白い。
ルーンの着脱も簡単なので、その辺を気軽に色々試せるもの〇。
×.ボタン配置がスタート画面に戻るorゲームを起動する度に元に戻される
これはバグなのだろうか?ゲームを起動する度にボタン配置がいちいちデフォルトに戻されるので、設定し直すのがかなり面倒だった。
×.次元の狭間の位置が分かりにくい
次元の狭間とは、エリアクリア後に挑めるようになるチャレンジコンテンツのこと。
エリアをクリアしたら「解放されました」との告知が入るのだが、肝心の挑戦できるマップが分からない。
どうせただのちょっと難しい戦闘に挑めるというだけで、報酬も特殊な物も無いし特別感も無い。
ちょっとした稼ぎに使えるコンテンツ程度の存在なので、もっと分かりやすくしてよかったのではなかったのだろうか?
×.受け身が取れない
上下に広いマップだとこれがかなりストレスになる。
トラップがかなり多く、上でも書いた飛び回ったり地形を貫通してくる敵といった、被弾しやすい要素がかなり多いこのゲームにおいて、いちいち被弾するとどこかに着地するまで落とされるのはかなりめんどい。
×.敵のリスポーンがこまめ過ぎる
今作では、基本的にはマップ移動をすると敵が復活する。強制戦闘の物も例外ではない。(全てというわけではないが、大体のところではこう)
なので、探索しているといちいち敵が復活してきて面倒に感じるシーンが多い。
更に酷いのは、同じマップ内でも復活する場合がそこそこあるという点。
宝箱の前に強制戦闘があり、それを終わらせた後に宝箱を取る。そして引き返そうとすると、またそこで強制戦闘が発生するという感じのもの。流石にこれはしつこかった。
#調整
微妙。
…と言っても、おそらく筆者は初見で上から二番目の難易度(ベテラン)でやっていたからそう感じられただけだとは思うが。
△.高火力ではあるが、高タフネスの敵はいない
ゲームにありがちな傾向として、高火力&高タフネスというものがある。
つまりは、「攻撃力が高くておまけに耐久力も高い」という、ステータスでごり押してくる感じの調整。嫌われがちなやつ。
初見から高難易度で遊んでいたわけだが、このような調整を感じる所は無かった。異様に固いと感じる場面が無かったのは褒めどころ。
しかし、終盤の火力のぶっ飛び具合には辟易した。出現数も多いし、若干バランスが崩壊しているように感じられた。
ルーンと装備もガッチガチを固めていても即死することがあったぐらいなので、終盤の調整は下手くそだったと思う。
×.一部の敵が逃げすぎてだるい
戦闘の項でも書いたが、飛び道具持ちや地形を無視して動く亡霊系の敵がとにかく逃げる。動く。対応がかなり面倒。
それに加えて、ソウルリーパーというボスもかなり逃げる。とにかく逃げる。
そのくせ、瞬間的に接近してきて予備動作の無いノーモーション攻撃で吹っ飛ばしてまた逃げる…というムーヴをかましてくる。ものすごくつまらないボス戦に感じられた。
こちらには追いかける手段も無ければ追撃する飛び道具も無いので、逃げすぎる敵はただただ時間を稼がれているだけでしかない存在。
この点は、やり過ぎてストレスの溜まる敵が散見されて残念だった。
×.スキルの格差が大きい
スキルセット枠が少ないという点もあって、このスキル格差がより強く感じられたような気がした。
極論を言えば、トルネードスラッシュと一刀両断さえあればどうとでもなっていた印象。
×.連続ヒットが多すぎる
とにかく、敵の攻撃に連続ヒットが多い。食らっている間は無防備になり拘束されるので、他の攻撃も食らい放題。結果、とんでもない被弾をする。そのままハメられて死ぬこともしばしば。
更に救えないのが、連続ヒットする攻撃に限って回避が難しかったり、出鱈目に攻撃範囲が広いという事が多い。
ハメ上等な雰囲気が醸し出されていて、あんまり気分がいいものでは無かった。
×.状態異常が多すぎるかつ強い
ルーンや装備で防護できるとはいえ、かかる頻度が多い。更に、その効果は結構痛い。
防護するにしても、貴重なアクセサリーやルーンのスロットを使わなければならないため、気軽に装着することも憚られる。
というか、それ以前にその状態異常を防ぐ装備を手に入れなければならない。そして、それは少し手間になる。
ルーンはランダム入手だし、アクセに関しては終盤にならなければその類のものは手に入らない。
入手契機をもう少しゆるくしても良かったのでは?
×.一部マップでの無限湧き
鬱陶しいぐらい亡霊系の敵が湧いてくるエリアがあるが、正直かなりストレスが溜まった。
散々書いている通り対応が面倒なタイプの敵だし、湧いてくるペースもかなり早い。いちいち怯んだり落とされたりで、非常に面倒だった。ほどほどって大事だね。
×.チャレンジコンテンツにおける同時出現ボス
チャレンジ系コンテンツである「亡者の迷宮」における、同時戦闘の多さは純粋にセンスが無いと感じられた。
個人的なゲームに対する考えとして、「単体で戦う事を想定して作られた敵は、複数体同時出現させるべきではない」というものがある。
これに関しては、モンハンが一番分かりやすい。大型モンスター同時狩猟とか全く面白くないよね。
単体での戦闘を想定しているという事は、単体で完結している調整と設計をなされているという事であるので、それを二体以上同時に出したらもうプレイヤー側がオーバーフローするだけ。
要は、対応がしきれなくなる。当たり前である。だって、そもそも一体で十分手間を食わされる相手なんだから。
そんな文字通りの”無茶ぶり”をして、「どう?むずいっしょ?^^」というのは、流石に思考停止し過ぎ。
「よく見れば対応できる」ではなく、「よく見ても無理」な領域までいってしまうと、プレイヤーは歯ごたえよりも理不尽にさらされるストレスの方が強く感じてしまうので、ここは履き違えないでほしかったかなぁというのが率直な感想。
この辺が分からなかったら隻狼をやってみよう。そういう面においては、あのゲームは良い教科書だと思う。
総評
項目 | 点数 | コメント |
戦闘(ゲーム性) | 18/25 | スピーディーで爽快感がある戦闘。しかし、底は浅い。軽快に動かして敵を打倒する面白味はあるが、戦法が最後まであまり変わらないので、飽きが来るのは早い。 |
グラフィック | 9/10 |
美麗なドット絵には、強いこだわりとリスペクト心を感じる。ドラゴンズクラウンプロ以降、ヴァニラウェアのこの手のドット絵アクションとはご無沙汰だったが、久しぶりにこの独特なグラフィック表現を楽しむことが出来た。 |
ストーリー・キャラクター | 9/15 | 感じることは無し。話の描写が淡々としており、ドラマティックに感じる場面は無かった。どうせ綺麗なドット絵を使っているのだし、もっとそちらを活用した演出を盛り込んでも良いように感じられた。 |
システム | 14/20 |
可もなく不可もなし。良い点と悪い点のそれぞれがある。 |
調整 | 13/20 |
あまり褒めらた感じでは無かった。特に、終盤の急激な敵の火力上昇具合や、過剰な配置には若干のバランス崩壊を感じられた。それ以外にも眉をひそめてしまうシーンが多々あったので、この辺に関しては良好とは言い難いと感じられた。 |
ヴァニラウェア感 |
9/10 |
やってみれば分かるが、本当にヴァニラウェアのゲームまんまという感じのゲーム。この再現度の高さは評価されるべきだと思う。 強いて言えば、美味しそうな食事アイテムのグラフィックをもっと盛り込んでいれば、それらしいゲームに近づいていたと思う。 |
合計 | 72/100 | ~59:駄作 60~69:凡作 70~79:佳作 80~89:良作 90~100:名作 ※暫定 |
こだわりとリスペクトに全振りしたゲーム。
アクションに関しては及第点であったが、細かい所で不満がぽつぽつと出てきていたので、満足するには色々と足りていないゲームだった。
しかし、類を見ないレベルで綺麗なドット絵が、その不満をある程度吹き飛ばしてくれる。
筆者は、あまりグラフィックに口うるさい質ではない。
しかし、「独特で綺麗なグラフィック表現というのは、思っていたよりもプレイヤーに衝撃と感動を与えるものなのかもしれない」と、少し認識を改めさせられた。
「ただリアル志向で綺麗」というわけではなく、「そのゲーム(メーカー)ならではの独自性の強い特色あるグラフィック」というのも、今後は求められるようになる…のかもしれない。
少なくとも、それを実現できているゲームやメーカーって、それだけでもかなり強い存在感を放っているよね。ヴァニラウェアとか、アークシステムワークスとか。
最近だとスタマスのグラフィックもすごかったな。リアル系だけでは無く、アニメ調のグラフィックも進化してきていてオラわくわくすっぞ。
終わり。